【イギリス】SHERLOCKはほんとよく出来てる
シャーロックホームズの映像化というと、ジェレミーブレット版があまりにも完璧なので、舞台設定を現代に移したこの『SHERLOCK』は、完全に敬遠していました。だいたい、「●○を大胆リメイク!」とかいうものが良かったためしがないじゃないですか。
でも、なんだかんだ評判が良かったのでちょっとずつ気になり始めた頃に、動画サービス「hulu(www.hulu.jp/)」に登場したので、わりとすぐに飛びつきました。
結果、すごく良い。
各話のタイトルこそ中途半端にあざとくていかがなものかと思いましたが、良い具合に原作を下地にしつつ、違和感なく現代の話に出来ているし(全編に科学技術やスマートフォンが駆使されるのも、このドラマの大きな特長です)、大きく改変されていながらも、シャーロックホームズの世界観に一貫して漂う陰鬱な雰囲気がしっかりと描かれているのには、正直驚きました。
映像が美しいのも印象的です。また、シャーロックの頭の中の情報やスマホの内容が文字として画面に出てくるのも、非常に興味深い演出だと思います。こういう演出は最近、SFものを中心に散見されますが、ホームズ=クラシックな映像を想定していただけに、掴みでぐっと持っていかれた感じがしました。
シャーロック、ワトソン、マイクロフト、レストレード辺りの人物設定はそれほど原作とかけ離れていませんが、モリアーティとアイリーンアドラーはなかなか秀逸だと思います。
惜しむらくは、まだ2シーズン6話しかやっていないにも関わらず、早々にこうした重要人物が登場してしまったことで、全体に対してシャーロックが心を乱す描写が多過ぎる気がします。数多くの事件を冷静沈着に解決するシャーロックが居てこそ、ごく稀に出てくるスパイスとして、モリアーティやアイリーンアドラーとの関係が生きてくると思うからです。この割合が変わっているために、本作ではシャーロックがただの幼くて社会経験の乏しい人物にみえてしまっています。もっとも、それこそが制作サイドの狙いなのかもしれませんが、展開が性急な感は否めません。
ともあれ、近年の海外ドラマでは群を抜いた良作である事は間違いありません。当然、原作を知っていればより深く楽しむ事ができますが、おそらく予備知識がなくても、このドラマだけで十二分に魅力的なものに感じられると思います。おすすめです。